2025年1月27日月曜日

高校数学は何に使うのか?(3)

 経営学部で企業金融論や経営統計を担当している木下です。

今回は二次式の展開とリスク管理についてです。

世の中には様々な資産がありますから、それらを組み合わせることでリスクを抑えつつリターンを高める方法がないかを考えたくなります。

直観的には、同じような動きをする資産同士を組み合わせてもリスク分散にはなりませんね。

好景気が来た時に両方が儲かり、不景気が来たら両方が損失を出すのであれば組み合わせてもリスクは減らないわけです。逆に反対の方向に動く資産同士を組み合わせればリスクを減らせます。

こういった連動性を数値的に評価するために共分散や相関係数といった統計学での指標が必要になります。

では、組み合わせるとリスクはどうなるか、これは以下の式で書けます。


一見難しそうに見えますが、これは単なる二次式の展開


を応用して使っているだけです。中学高校の基本的な数学の基本を押さえておくだけで、リスク管理等の方法を効率的に学ぶことができます。

これらを応用してA株式とB株式を組み合わせたり、不動産と株式を組み合わせたりして最適な資産配分を考えることができます。例えば下図のように、株式インデックスと不動産投資信託インデックスを使って、「同じリターンならできるだけ小さいリスクの組み合わせ」を求めることができます。



ここまでの話は資産Xと資産Yを組み合わせる話ですが、当然N資産を組み合わせる方法にも拡張されていきます。

またファイナンス理論等では「みんなが最適行動を取ったらどうなるか?」といったことを考えます。現実では当然完全な最適行動を取っている主体はいないわけですが、誰もが自分や仲間のために自分なりに最適な行動を取っているわけですから、近似的には成り立つ気がするわけです。

理論とは異なる現象が現実で観測されたならば、誰かが最適行動を取っていないことになります。ということは何等かの超過収益のチャンスが存在するということになります。対戦相手の行動を考えながら自分の最適化行動を考えるには、数学のみではなく総合的な能力が必要になるのです。