2019年9月9日月曜日

スポーツやビジネスにおける競争の公平性


流通マーケティング学科の北村です。
来年2020年は、東京で、オリンピックとパラリンピックが開催されますね。スポーツ観戦好きの私としては、東京が開催地に選ばれた時、自分の居住地で開催されるなんて一生に一度のことだと、とても有り難く、また嬉しく感じたものです。

さて、このオリ・パラ大会を世界中の人たちが現地やテレビなどで観戦するのは、選手たちが互いに最高のパフォーマンスを発揮して競い合う姿に、心を揺さぶられるからではないでしょうか。試合の結果を伝えるニュースを見聞きするのと比べると、観戦の感動や興奮はやはり大きいですよね。

ただしこの感動や興奮は、競技が公平に実施されていると思うからこそ、生まれると思うのです。もし、抜け駆けや八百長などがあると感じたら、しらけたり、チケット代金や観戦した時間を返せと腹立たしく思ったりすることでしょう。

しかし、勝ち負けにこだわる選手や、時には審判や観客は、不正な行為を働くかもしれません。それゆえ、公平な競争にするために、以下のようなルールや約束事があります。
  • 選手が薬物の力でパフォーマンスを向上させるのを防ぐために、ドーピング検査があります。
  • タイムを競う競技では、抜け駆けを防ぎ、号砲が鳴った後のスタートで揃えるために、フライング規定があります(陸上や水泳など。例えば陸上短距離では、0100未満がフライングと判定されます)。
  • 審判が自国の選手をひいきして高い点を付け、ライバル選手に低い点を付けると不公平だとして、採点競技では複数の審判の採点のうち最高点と最低点は得点を決めるのに採用しないというルールがあります(空手の型や、フィギュアスケートなど)。
  • 視覚障害者が鈴の入ったボールなど音を頼りにゴールを競うゴールボールでは、試合中に観客は応援や助言を送ることができません


ところが、こうしたルールや約束事も、完璧なものではありません。
陸上のセメンヤ選手は、オリンピックの800m走で2連覇した実力者です。彼女はもともとの身体的特徴として女性としては男性ホルモンの値が高いのですが、これは薬物摂取と同様にパフォーマンスの向上につながるとして抗議を受けました。結果、国際陸連は、彼女が薬などで男性ホルモン値を一定基準以下にしなければ競技に参加させないと決定しました。これに抗議する本人の訴えも退けられ、不正行為を働いたわけでもないのに彼女は競技に参加できていません。英BBCの記者は、もともとの身体的特徴として陸上のボルト選手の身長の高さはとがめられない(のに、なぜ彼女だけ?)とコメントしています(これに関し、おととい9/7に、彼女が女子サッカークラブに入団するというニュースがありました。競技種目を変更し、スポーツを続けるようです)。

またパラリンピックでは、公平性と競技性が問題となります。障害の程度に応じて選手を分類した上で競わせないと、公平ではありません。しかしそれを追求して、分類を細かくしすぎると、同じクラスのライバルが少人数となってしまいます。これではメダルの価値が下がり、観客もしらけるかもしれません。実際、東京大会の招致活動で活躍したトライアスロンの谷真海選手は、運動機能障害PTS4クラスという分類だそうですが、競技人口の少なさを理由に、東京大会ではこのクラスは実施種目から一旦外されました。その後、障害の程度で言えば1つ軽いクラスと合わせて実施されることが決まりました。彼女はセメンヤ選手と異なり競技には参加できますが、障害の軽い選手と競うわけです

ビジネスにおいても、関係者だからこそ知りえた情報で株取引を抜け駆け的に有利にするインサイダー取引や、自由な価格競争を阻害するカルテルなどが禁止されているのは、皆さんご存じだと思います。スポーツもビジネスも、公平性をどう確保するか、グレーゾーンにはどう対応するのかなどの取り決めが参加者に大きな影響を与えます。その分、ルールや制度の設計が重要となるわけです。


文責:北村 真琴